松本清張の高校殺人事件を読んで

私は、松本清張が好きで若い頃よく読みました

松本清張は1953年に「或る小倉日記伝」で芥川賞を受賞し、その後

「点と線」、「ゼロの焦点」、「砂の器」等で社会派推理作家の第一人者

となって行きます。

私が、初めて読んだ清張の本は「高校殺人事件」です。高校生向けの

月刊誌に連載されたものを一冊の新書版にしたものです。

もう、40年以上昔のことですが、東京での大学受験を終え、自宅に帰る

特急列車の中で読みました。東京駅から私の地元の駅までは4時間ほど

でしたが、列車の中で読み切りました。大昔のことで詳しいストーリーは

記憶にありませんが、仲良しの高校生のグループの一人が殺されてしまい

残された友人たちが、犯人を追い、事件を究明するというものでした。

高校生向けなので、社会派ものではありませんが、本の中に引き込まれて

一気に読み通しました。それから清張の本をよく、読むようになりました。

これから、お話しするのは、餅が凶器にされた事件です。

清張の短編集にありました。あらすじとしては初老の男が若い未亡人に

関係を迫るのですが反対に殺されたしまうというものです。また、清張の

社会派的な面が出ていたのは、「事件の起こった村は隣近所が皆親戚関係の

ような閉鎖的なところで、警察が捜査に協力してもらえず困ったと書いて

あった事です。」(これは記憶で書いているので、他の作品と混同している

のかもしれません。)捜査を進めていくとその未亡人が怪しいということに

なり、家宅捜索をしたのですが、凶器がみつからず、事件は迷宮入りとなり

ました。事件の捜査でこの未亡人の自宅を訪れると柿餅やぜんざいを振舞っ

ていて、近所の親しい人達に食べさせているところで、刑事たちも、一緒に

ご馳走になりました。

事件の真相が解明されぬまま、月日が経ち、刑事は自宅に居る時、固くなっ

た重い餅を足の上に落とします。このとき、刑事は「アッ」と思います。

あの時食べた餅が凶器だったのではと、食べてしまったのでは見つかる

はずがありません。その短編集で記憶に残っているのはこの作品だけです。